人生で最も印象に残る「頑張れ」とコマ劇場


私が「頑張る」という言葉を極度に嫌うのは、周知のことかと思います。
そもそも「我を張る」が語源なので、いやでも浅ましさを感じるからです。
それだけならまだしも、これが命令形になったら「頑張れ」ですよ。
こんな無責任な、こんな冷酷な言葉は、そうざらにはありません。
何故と言うに、「頑張れ」はごく一方的な投げ掛けの言葉であって、
発言者はひとつも頑張りませんし、またその必要もないからです。

そんな訳で私は「頑張る」とか「頑張れ」とか言うことはないのですが、
人が発した「頑張れ」で唯一耳と心に残っているものがあります。

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2015 / 10 / 18 ( Sun ) 18:23:08 | 言葉 | TrackBack(0) | Comment(0) | トップ↑
とてもすごいので鳥肌が立つ


怪しいタイトルは、最近気になっている言葉を三つ並べたものである。

① とても

今ではあとに続く言葉を強める意味で使われるのが普通になったが、
「とても」の本来の用法は現在のようなものとは少し違っている。。
「とても~ない」と、うしろに否定語あるいは否定的表現を伴うものだ。

「こんなに雪が積もったら、とても買い物には出られない。」

これが、「とても」本来の使い方なのだ。
だが最近の使い方は、英語のVERYの意味が圧倒的に多いようだ。

「ここから見る景色は、とても美しい。」

こういう表現は、誤用とは言わないまでも、「とても」の本義ではない。
手元の辞書では、上の用法が第一義で下の用法は第二義として書かれている。

② すごい

漢字で書くと「凄い」、本来は「スサマジイ様子」を表す言葉だ。
手元の辞書では、第一の用法は「ぞっとするほど恐ろしい」となっている。
そのような状況が、はたして身の回りに転がっているだろうか。
ヘビ女が生きているヘビを食っているような、そんなところか。
どことなく、血の匂いと消えかかる命を連想させる言葉だ。

ところが、それと知りつつ、自分でもついつい使ってしまうのだ。

「今日はすごく嬉しい事があったから、ちょっとお祝いだ。」

「すごい」ことと「嬉しい」ことは、同時に成立するものだろうか。
冷静に考えればおかしい使い方なのだが、これを自分でもやらかしてしまう。
もっとひどいのは、次のような使い方だ。

「東京スカイツリー、すごい高い!」

さすがに私自身はこういう使い方はしないが、よくある誤用だ。
後続の形容詞を修飾するなら連用形でなければならないところだが、
「すごく」と連用形で用いるのではなく「すごい」と連体形で用いている。
だが、この誤用もすでに市民権を得ていて、誤用とは言えなくなってきている。

③ 鳥肌が立つ

生理的な現象として「鳥肌が立つ」場合はもちろん構わないのだが、
誤用が目立つという認識を持っている言葉の一つがこれだ。

「コンソメの繊細な味に、鳥肌が立った。」

「感動する」というような意味合いで用いられることが多いようだが、違う。
鳥肌が立つ原因、本来は「感動」ではなく「恐怖」なのだ。
最近読んだ本に、この誤用を憂える人の談話があった。
「近頃の人は、本当にそういう経験をしたことがないから間違える。」
たしか、そんなようなことが書かれていたと思う。
そう語るこの人は、太平洋戦争時の特攻隊員の生き残りである。
死を覚悟で敵艦めがけて急降下していくときなどは、
鳥肌どころか操縦桿を握る手もガクガクと震えることだろう。
小便ぐらい漏らしても、なんの不思議もない状況ではないか。
コンソメごときでいちいち鳥肌を立てていては申し訳ない。

三つの言葉に共通するのは、「強め」の役割という性格だ。
「とても」と「すごい」は続く語を強めるために用いる。
「鳥肌が立つ」は感動の気持ちを強く表すために用いる。
してみれば、私が忌み嫌う「超~」と本質は何も変わらない。

先にも書いたが、情けないのは自分でも「すごい」を安易に使うことだ。
浅田真央のフリーの演技を「すごいとしか言いようがない。」と評するのは、
実は「すごい」以外の表現を探すことを放棄しているだけの横着かもしれない。
しおらしく、そんな反省もしておこう。

言葉は、「使った者勝ち」というきわめて柔軟な道具だ。
その性格上、時代とともに変化していくことは避けられない。
だからといって、言葉の本義を忘れてしまってはいかにも味気ない。
ほんの僅かな意識が、日常の言語生活を豊かにしてくれるはずなのだ。
ここ最近の目標は、安直な「すごい」を排除することである。
場面場面で「すごい」に取って代わる言葉を探すのは、思いのほか楽しい。


こういったエントリを起こすと、人から尋ねられることがある。
「あなたは、常日頃あんなことを考えて言葉を使うのか?」と。
そうした時の私の返事は、いつも決まっている。

「そうだよ。」
2014 / 03 / 02 ( Sun ) 11:21:59 | 言葉 | TrackBack(0) | Comment(0) | トップ↑
お笑いタレントの横着


予備校講師の「今でしょ!」が流行語大賞確定というほどのブレイク、
受験生の士気を鼓舞する言葉としてはなかなかいいのではないか。
だが、先日とても残念な光景を目にしてしまった。
ふだんは滅多にTVを観ない私だがその時は家の誰かがTVを観ていて、
いやでもその音が聞こえてくるという状況だった。
いわゆるお笑いタレントが大勢で喋っているような番組だったのだが、
その中で「今でしょ」が頻繁に彼らの口に上るのである。
しかも、「今でしょ」と言うタイミングを、明らかに待っている。
言える時には我先に言おうとしていて、何とも浅ましい。

それで飯を食おうという人間が、どうしてそんな横着をするのだろう。
人の決めゼリフを何のヒネリもなくパクって、恥ずかしくないのか。
言う奴も言う奴だが、それで笑っているバカもバカである。

少し展開を加えた使い方を、自分なりに考えてみた。

・あいつ、何か田舎モン臭いよな―千葉でしょ
・増上寺ってどこにあったっけな―芝でしょ
・青森あたりの林は―ヒバでしょ
・栗拾いでケガしちゃったよ―イガでしょ
・トントン拍子に出世しちゃって―島でしょ
・とんでもない海外赴任だってな―リマでしょ

まあ、ざっとこんなところだ。

・あんな強い中ボスは珍しいね―ゲマでしょ
・骨付きをしゃぶるのもいいね―手羽でしょ

などというのも考えてみたら、母音が違う。

・神社にたくさんぶら下がってる―絵馬でしょ

母音はゲマやテバと同じだが、imaとemaは耳への当たりが近い。
同じア行の母音だから、抵抗なく入ってくる。
ゲマのgや手羽のbという強い子音がないのもいい。

・お父さんはどこにいるの?―居間でしょ

これはよさそうだが、アクセントが違うのでダメだ。
「今」はマと前を強く発音するが、「居間」はイと後ろが強い。

・お前もほとほと―ヒマでしょ

これも居間と同じ理由で却下である。

落語家は、こういったことを日夜真剣に考えている職業だ。
死んだ春風亭柳昇が、高座でいつも次のような導入を使っていた。

「あたくしは春風亭柳昇と申しまして、エエ、大きなことを言うようですが、
今や春風亭柳昇といえば我が国ではあたし一人でございます。」


こういった「人なき荒野を踏み拓く」ような気概が、芸人には欲しい。
元が取るに足らないことだけに、大真面目に臆せずにやらないといけない。
流れに乗って人のものを掠め取るような真似は、泥棒猫と変わらない。
芸人とはいえ、渇しても盗泉の水を飲まずという矜持は持ってもらいたい。

ところで…

美馬怜子

このお天気お姉さん、可愛いよねえ― 美馬でしょ!
2013 / 05 / 04 ( Sat ) 10:14:52 | 言葉 | TrackBack(0) | Comment(0) | トップ↑
バカはどこにでもいる


区の出張所である地域センターという場所へ行って、
払い忘れていたお袋の介護保険料を納めてきたときのことです。

「せっかく来たんだから来年の3月分まで全部払っていきます。」と
あたしが言った時の職員の応対にブチ切れました。

「そうですね。」
 

はぁ?

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2008 / 11 / 02 ( Sun ) 09:18:38 | 言葉 | TrackBack(0) | Comment(9) | トップ↑
笑味


また日本語コラムのネタを一つ損しますが、今日はこの言葉について書きます。

【賞味期限】という言葉が浸透したために、【笑味】は間違いみたいですが、
これは辞書にも収められているれっきとした日本語です。
浸透率が低いので使う方も少なく、そもそも誤用を見出せません。
なのでコラムではなく、ここに書こうという気になった次第です。

【賞味】という言葉は【味わいながら食べる】という意味です。
人様に食べ物を差し上げる際に使ったら、これはどうでしょう。
「どうぞ、ご賞味ください。」はよく目にする表現なのですが、
「しっかり味わって食べてくれよな。」というニュアンスが生じています。
強制的で高圧的、オーバーに言えばそういう風に取れます。

そこで役に立つのが【笑味】という言葉です。
贈答品に「ご笑納ください」という言葉を添えるのは普通ですね。
その応用編だと思っていただければ分かり易いでしょうか。
「さほど美味しくないかもしれませんが、どうぞ。」という意味です。
もちろん美味しくないと分かりきっていれば人にはあげないので、
これは日本人独特の謙譲を帯びた言い回しということになります。

前々回の弁当の記事本文中に用いましたが、他の言葉では用をなしません。
まさにこの言葉を使えと言わんばかりの状況だったと思います。
お中元に食品を贈る方は、ぜひ【笑味】を使ってみてください。
相手の方が「おっ!?」と思われること請け合いです。

それにしても、食べる側の懐の広さも大事ですよね。
                   深さ
自分の味覚に合わないとすぐに卓袱台返しをするような
そんな狭量なろくでなしには通じないかもしれません。
その辺、よ~く心しておくように、新三よ。
2008 / 05 / 23 ( Fri ) 14:02:13 | 言葉 | TrackBack(0) | Comment(2) | トップ↑
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