言葉を扱う者の意地と見識


<立冬の日のおだやかに掃き濯ぎ 宮川富光>
朝から、立冬だ立冬だと何度聞いたことでしょうか。
ニュースで、あちこちのブログや掲示板で、もううんざりです。
他に言うべきことのない方々には「立冬」が大きなネタになるんですね。
今日が立冬だということは、ずっと前から分かっていることですのに!
今日が何の前触れもなくいきなり立冬になったのなら、そりゃあたしも驚きますけどね。
だいいち東京はそこそこ温和な一日で、「冬」の気配もありゃしませんでした。
一日中半袖のTシャツで過ごしたあたし、今日はブリブリモードの更新です。

まずはこちらの画像をご覧いただくことにいたしましょうか。
中吊り 昨年から日本の競馬界を席捲してきたディープインパクト。
 あたしは小学校5年から競馬をやっていますが、
 間違いなく史上最強馬だと信じています。
 凱旋門賞の3着もさることながら、その後の薬物疑惑と
 年内一杯での現役引退の発表など、話題も豊富です。
 ですが、この中吊り広告はどうにもいただけませんでしたね。
いえいえ、馬やスタッフがいけないのではありません。
今回のあたしの舌鋒、その照準はマスコミに向けられております。

「天馬」という二文字、これが気に食わないんですよ。

1976年春に皐月賞を制した快速馬、トウショウボーイ。
マスコミが彼に与えた称号こそが、「天馬」でした。
同期のライバルであったテンポイントは「流星の貴公子」というニックネームでした。
両馬の個性を端的に言い表したネーミング、見事というほかありません。

もっと古いところでは地方から中央に転入してきて「怪物」という名を授かったハイセイコー、
しかし「怪物」という名前はハイセイコーよりも5年前にタケシバオーという馬に
与えられていた異名であることはつとに知られています。
しかし、地方競馬から中央競馬に参入していつもいつも力一杯走るハイセイコー、
彼は瞬く間に国民的なアイドルとなり国中がハイセイコー熱にうかされました。
そのハイセイコーが「怪物」になった途端にタケシバオーは「元祖・怪物」ですと。
バカも道の両側にしやがれってんだ。(あ、鈍い方のために説明しますが、
道の両側=歩道でホドーホドー、つまり程ほどにしやがれってことです。)

スーパーホース、アイドルホースを別格に扱うことに否やはありません。
ただ、マスコミの安直さが気になって気になってイライラします。
言葉を扱う仕事をしている人間が、他人の作った言葉を安易に真似する。
これは一体全体何を意味するのかというと答えは簡単、言葉の衰退です。
新しい言葉を紡ぎ出せない以上、言葉の拡大再生産はありえません。
よくても現状維持の単純再生産、普通に考えれば縮小に向かうと思うのが当たり前です。
メディアを問わず、報道する人間の資質としてはまず客観性が問われます。
しかし、純粋に客観に徹してしまえば、他者との差が生み出しにくくなる、
そこに報道する側の人間の苦悩があることは容易に想像も理解もできます。
でも、だからと言って、他人の言葉を借り受けて何だと言うのでしょう。
創造性のない藝術がただの戯言に堕してしまうのとまったく同様で、
創造性のかけらすら見出すことのできない報道は、マスコミの恥なのです。
安直に「天馬」などと言えば、ただディープインパクトだけにとどまらず
今は文字通り天翔ける馬となったトウショウボーイをも貶めることになります。

こういうバカ共は、心底惚れた女さえも「借りてきた台詞」で口説くことでしょう。
…虫酸が走る思いです。
2006 / 11 / 07 ( Tue ) 22:22:51 | 日記 | TrackBack(0) | Comment(6) | トップ↑
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コメント
タイトル:

ぶりぶりモードの新三さん
ご機嫌なおりましたでしょうか?
長女は急に寒くなったもんですから
忙しくなってきましたよ!
そう・・長女のバイトは「葬儀会館コンパニオン」
そう、抵抗力のないお年よりは気候の変化が大敵なのです。
と、関係無いおはなしすみません。

私もディープインパクトの記事は悲しくなるので見ないようにしています。
競馬歴は短いですが、この対応はひどいもんです。
今年は競馬もできずに終わりそうです。
名前: ゆみ #- : 2006/11/08 14:00 :URL [ 編集] | トップ↑
タイトル:鋭いですね~

「客観性」と「他者との差」。哲学の構造主義と実存主義を彷彿とさせるお話ですね(笑)! 仰るとおり、その難しい営みから逃げてしまっては、何も生み出せません。

文章に未熟な若者が、いきなり村上春樹などを真似て華麗な日本語を創造しようとしても、だいたいコケるんですって。「天馬」の件もそれと似ているかもしれません。
日本語の天才になれないのなら、むしろ気取らず、未熟な自分をそのまま晒した方がいいのでしょうね……自分で言いつつ、耳が痛いです(笑)。
名前: ゆすらうめ #xsrTc1W6 : 2006/11/08 17:35 :URL [ 編集] | トップ↑
タイトル:今晩は♪

朝の寒さからすれば意外なほど暖かかった日中、
でも夜になったらなったでそこそこ冷えている東京です。

ゆみさん
コメントしづらかったでしょう、この記事…。
いつもありがとうございます。
一晩寝ればたいがいのことはリセットされているあたしです。(笑)
今日も今日とて、ゴキゲン麗しゅうござんす。
競馬もできないなんて、さみしい話ですね。
東京にお越しの際には中山でも府中でもご案内しますよ。
ディープインパクト、勝ち続けて欲しいです。
勝つことで、周囲のイヤな話を払拭してもらいましょう。

ゆすらうめさん
哲学科のご卒業でしたっけ?(笑)
表現が模倣から始まることには何らの疑問も持たないあたしです。
ですが、それがただの模倣に終始してしまうのでは
底が浅いという謗りは免れないところでしょう。
言葉を紡ぎだす人は、一言半句にも全身全霊を注ぐもの。
それを昨日今日の駆け出しに使いこなせるはずもありません。

ねえ、皆さん
あたし、とっても不思議に思うことがあるんですよ。
この週刊誌のデスク、よくこの見出しにOKを出しましたよね。
デスク一人の責任ではないのでしょうけれど、
発行までの段階で誰一人として「天馬」に気付かなかったのでしょうか。
会社を挙げて「私たちは馬鹿です」と言っているようなものです。
可笑しくってお菓子食って、酒が進んじまいます。

名前: 新三 #brXp5Gdo : 2006/11/08 22:32 :URL [ 編集] | トップ↑
タイトル:

心底惚れた女にも「借りてきた台詞」で口説く・・う~ん新三さまがどうやって口説かれるのかが気になって眠れそうにありません・・
名前: あんっこ #- : 2006/11/08 23:52 :URL [ 編集] | トップ↑
タイトル:記者たちよ

このブログを読みなさい。
と言いたくなりました。

犯罪がらみではありませんが、記者やTV取材で取り囲まれ、付きまとわれた経験アリの私ですが、コメントしないでいたら勝手に私の心情を記事にされたりしたときには、こいつらバカか?と思いましたよ。
大新聞の記者さん。
言葉を使うプロが勝手にこんなこと書くのかって、唖然としましたよ。
いわゆる、この状況ではこういった描写・・・みたいなプロトタイプの刷り込みでもあるんですかね。
と、まあ、新三様の書かれたことからそんな出来事を思い出しました。

>心底惚れた女にも「借りてきた台詞」で口説く・・・
には、大笑い、拍手喝采しました。
きっとその場、シュチュエーションも借り物なんじゃないですかね。
名前: kasuga #- : 2006/11/09 00:11 :URL [ 編集] | トップ↑
タイトル:おやまあ、遅くにお二人も!

まさか、キッチンでドランカーしておいでだったんではないでしょうね!?

あんっこさん
最近では女遊びの虫もすっかり治まって、
それはそれはチンコウ品行方正なあたしでございます。
で、ここ数日というもの、女を口説いてはおりませんので、
もう口説き方をすっかり忘れちまいました。
口説いてみたいと思わせる女性もなかなかいませんしね。
自分を棚に上げて、理想だけは高いエロっ子です。

kasugaさん
そんな経験をお持ちなんですか…。
あたしなら短気を起こして記者を殴り倒し、
また別の記事になって新聞に掲載されることでしょうね。(苦笑)
言葉を使うプロとはいえ、新聞・週刊誌は売れてナンボ。
ヤツらは言葉を大事にしようなどと考えてはいませんよ。
とりあえずキャッチィな言葉ばかり並べ立てています。
それが軽薄だということは、分かる人には分かるのに…。

あたしのブログにおいでくださる方々は、
どなたもご自分のスタイルをお持ちです。
皆様の爪の垢を煎じて、記者たちに飲ませてやりt…


いや、もったいないからやめておくとしましょう。




名前: 新三 #brXp5Gdo : 2006/11/09 00:42 :URL [ 編集] | トップ↑
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