肉屋の底力


暮れになると、正月料理用の肉を肉屋に注文します。
新三スペシャルの鶏肉は鶏専門店ですが、それ以外は懇意の肉屋です。

新「30日に取りに来るんですけど、テッポウは手に入りますかね?」
肉「いやー、つぶし(屠殺)が終わっちゃってるから、モツは出ないよ。」
新「冷凍でもいいんですけど、どうでしょう。」
肉「もう注文も受けてないんだよねぇ…。」
新「じゃあ、牛の肉スジならどうでしょう。」
肉「ああ、その方が間違いないね。」

ところが、テッポウが来たんです。
どこからどうやって調達したのか知りませんけど、
思った通りのテッポウが手に入ってあたしは欣喜雀躍。
ここのところ、煮込みと言ったらテッポウだけで作っています。
あ、テッポウというのは豚の直腸の異称です。

で、他にもあれこれ頼んだのですが、驚きの肉がありました。

驚きの肉といっても、変わった動物の肉ということではありません。
牛、です。
牛肉嫌いのあたしですが、人寄せの時にはよく牛を使います。
それに、若い衆はやはり肉を食べたいみたいですからね。

で、タタキとローストビーフの中間のようなものを作るんです。
ポン酢で食べるのもよし、わさび醤油で食べるのもよし、
あるいはコンソメゼリーを乗せて食べるのもまたよし、そんな感じです。

牛タタキ

この画像はちょっと赤みが薄いようで、実際はもう少し赤っぽかったでしょうか。
牛のシンタマという部分で、あたしはここを好んでタタキにするんです。

これを切って、食べたら美味しいんですよ。
なんか変な文になっちゃってますけど、どう言えばいいんでしょうか。
いつもと同じように作っているのにいつもよりも美味しい、ということです。
あたしの作るタタキを何度も食べたことがある家族も同意していましたっけ。

作り方が同じで結果が違うとなったら、これは材料しかありませんね。
テッポウのお礼もきちんとしたかったので、正月休み明けに早速ご挨拶。

新「シンタマ、すごく美味しかったんですけど、何でしょうか。」
肉「ああ、あれね、ちょっといい肉だったんだよ。」
新「え?和牛とか?」
肉「いや、純正な和牛ってことじゃないんだけどね。」
新「でも、輸入牛でもありませんでしたよね?」
肉「そう、交雑種と和牛の中間ぐらいって言えばいいのかな。」
新「なるほど。」
肉「ハズレもあるんだけど、いいのもあるんだよね。」
新「じゃあ、あたしはいいのを引いたってことですね。」

そしてあたしは、次の一言で絶句してしまいました。

肉「包丁の当たりが良かったから、美味いだろうと思ってたよ。」

包丁の当たりというのは、肉を捌いたり切ったりするときの包丁の感覚です。
刃が吸いつくようだとか、切っても手応えが今一つだとか、そういう総合的な、
別の言い方をすれば分析的な、でもほとんどが経験による直観的な判断ですね。
あたしも、魚ならある程度のことは分かるつもりでいるんです。
マグロの柵を刺身に引く時なんかは、身質で味が想像できます。
ですが、肉は難しくて、いいと思った肉がそうでもないこともままあります。
餅は餅屋と言う通り、肉は肉屋に任せてしまうのが一番安全なのでしょう。
肉屋との信頼関係を築くために、今までにたくさんの肉を買いました。
そして、できるだけその感想を伝えるようにしてきたつもりです。
今一つなら今一つとはっきり言いますし、よければよかったと褒めます。
長いことそんなやり取りを繰り返してきたからこそ、肉屋も、ないはずのテッポウをくれたり、
ちょっといい肉を回してくれたりするのではないかと勝手に思い込んでいます。
スーパーで肉を買っているのでは、こういう訳にはいきませんね。

でも、包丁の当たりで肉質を、ねぇぇ…。
笑顔でさらりと言ってのけるあたり、肉屋の底力に感服、脱帽です。
2011 / 01 / 10 ( Mon ) 07:39:37 | 美味しいもの | TrackBack(0) | Comment(0) | トップ↑
<<まずい、まただ… | ホーム | 七草粥>>
コメント
コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURL
http://shinza.blog17.fc2.com/tb.php/719-5b12746d
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
| ホーム |